六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

庄内平野の旅。

昔から歴史を訪ね歩くことが趣味で、社会人になってからもフラリと時々旅に出る。
先日、連休がとれたので、山形は庄内平野まで足を伸ばした。


夜行バスで往来し、ボロいレンタカーを借りて、激安のビジネスホテルを探す、若しくは車中泊もあり得る。
毎度のことで、とにかく安くつく方法で旅をする。慣れると苦も無く、ただただ、楽しい。


今回は戊辰戦争について。150年ほど前に日本人同士が殺しあった歴史。その歴史を知るための旅だった。


戊辰戦争、明治維新と言えば薩摩や長州、あるいは土佐など勝者側の目線で語られる事が多い。
やはり有名なのは坂本龍馬であり、高杉晋作であり、西郷隆盛なのだ。
けれど、それは歴史の一側面にしか過ぎない。
負けた側には負けた側の、理由や言い分、そして歴史がある。
負けた側で有名なのは、やはり新選組や会津藩だろう。悲劇的な最期を遂げた人々も多い。
上記に挙げた勝者、敗者双方の歴史的現場には、それこそ若いころから幾度となく足を運び続けている。


なので今回は訪れたことの無い、敗者の歴史的現場を尋ねることにしたのだ。


庄内平野、鶴岡の地。ここには庄内藩が存在した。
会津が京都を守護していたのに対し、庄内藩は将軍不在の江戸を守護していた。
江戸の治安を乱す薩摩藩の手先を殲滅すべく、江戸にある薩摩藩邸の焼き討ちを実行したのも、この庄内藩だ。
この薩摩藩邸の焼き討ちは、薩摩長州に戦争の口実を与え、それはやがて日本国中が殺しあう戊辰戦争へと発展する。故に、会津同様、庄内も朝敵として征討される対象になった。


会津が焦土と化し女子供まで新政府軍の殺戮の対象になったのに対し、庄内藩は自国の領土を殆ど侵されることなく、戊辰の終戦を迎えた。また、奥羽越(東北と新潟)の諸藩が、新政府軍に寝返り、あるいは降伏し、あるいは滅ぼされる過程の中で庄内藩は、その戦闘において負けることが無かった。常に勝ち続け、寝返った諸藩(秋田や天童藩)を打ち破り、主力の薩長軍をも粉砕した。


何故にこれほどまでに庄内藩は強かったのか?一つは酒井と言う港町を保有し外国との交易で最新鋭の銃器を所有していたこと。そしてもう一つは鬼玄蕃と呼ばれた若き家老の戦術が優れていたこと。
旅に赴くまでの僕の理解はその程度だった。


しかし当地の博物館を訪ね、学芸員さんのお話を伺ったところ「それだけでは無い」ことに気付かされた。


戦争は武士だけでしたのでは無いという事実。
貿易港で実際の商売を行ったのは本間家という商人だった。本間家は資材を投げ打ち、庄内藩の為に武器弾薬の購入を行ったという。この本間家は、もともと北前船の水運で財を成した。庄内の米を江戸に送って強大な富を得たそうだ。けれど、本間家は、その財産の4分の3までもを公益の為に費やすことを家訓としていたそうだ…。もうけた4分の3は自分の利益とせず社会に還元する。他者に利益となることのために使う。現代の日本の大企業には真似の出来ない所業だろう。


そして伸びきった戦線の武器や食料の補給に尽力したのは、いわゆる農民、百姓だった。また時には彼らも武士と共に武器を持って新政府軍と戦った。
庄内の殿様は、とにかく領民思いだったようで、彼らからの信頼も厚かった。命がけで民百姓が庄内藩の為に戦うのだ。他の諸藩では、ほとんど聞くことの出来ない事実。
戊辰戦争から遡ること30年前。庄内藩のお殿様は、幕府の命令によって越後長岡の地に転封することになった。つまり治める土地を新潟県の長岡に移すことになったのだ。
しかし、これに民百姓は怒り、命がけの一揆を起こす。「オラ達の殿様を他所には行かせねぇ!ずっとオラ達は殿様とは、一緒だんべ!!」と。
当時、一揆は重罪で首謀者は死罪を免れない。
それでも彼らは立ち上がった。本気で庄内の殿様が、好きだったのだろう。
そうして紆余曲折を経て、ついに当時絶対であったはずの幕命は覆り、転封は沙汰止みとなった。


つまり、こういうことだ。庄内藩が最後の最後まで勝ち続け、負けなかったのは上から下まで色々な身分の人々が信頼関係で結ばれ、共に一致団結して困難に立ち向かったからなのだ。


結局、奥羽越の諸藩が敗れ去り、最後に残った庄内藩も降伏せざるを得なくなる。
だが、他の諸藩とは違い、庄内藩への処分は寛大なものであったという。それは、殿様から領民に至るまでの固い結束の賜物と言って良いだろう。


職場のチームということを思い起させる。
結局は組織や集団が最大の力を発揮するためには、相互の信頼関係無くしてあり得ないということ。
逆に、それが強い集団こそが、その集団の持つ全ての力を出し切ることが可能であるということ。


あぁ。僕の所属する集団は果たして…。
信頼される人に成れるように、明日からも頑張ります。

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