師走が、急かす。そして乱れる心。
また、今年も約束したように、この時期がやってきた。
心乱れる、師走。
まるで多くの蟻達の群れが、その巣へと運ぶ極彩色の食物のような確かさで。
それは、死んでいるのか生きているのかも、悲しくなるほどに判然とはしない。
動いている様に見えても永遠に死んでいたり、全く微動だにしなくても、しぶとく逞しく生きて、やがて蠢く。
それを無条件に受け入れなければならない側は、たまったものでは無い。
蟻の巣はいつも、その時に向けて硬く身構えていなければならない。
身構えることは、心を疲れさせ、やがて無力感へと誘う。
そして途方に暮れてみる。
途方に暮れるのは至極簡単だ。目を瞑って、西の空を拝むだけで、時は無音で過ぎ去ってくれる。
けれども、そういうことは僕の趣味では無い。
夕日を見て感傷的になり、涙を流すほどに僕の心は腐ってはいない。
だから、師走の喧騒にあえて僕は身を晒した。
伏見にある千本鳥居の下に行った。
そこには世界中の人々が集まっていて、日本と言う特異な国の文化に心を奪われていた。
そこで僕はようやく目を瞑ることが出来た。
朝日も夕日もそこには存在しないけれど、確かで美しい冬の光が鳥居の影には満ちていた。
師走だからと言って耳を塞いだり、西の空を拝むのは止めよう。
冬の光が、優しくも強く、降り注ぐ鳥居の下で、僕はそんな風に思った。