侍魂
昨日の試合を見て悲しくなった。
フェアプレーとは程遠い試合をしていながらフェアプレーポイントで、アフリカ勢を抜いてトーナメント進出だなんて。
多くの人々が侍たちの躍進を信じてはいなかった。でも僕はサッカーが好きだから、弱くても頑張る侍たちの勝利を信じて応援した。どんなに強い相手にだって、勝つことが不可能では無いのがサッカーだから。
そして確実に、彼らは奇跡を起こしながら戦いを続けた。その姿は本当に美しかった。ピッチに立つ彼らの姿は、まるで草原を駆け抜ける青い雷鳴のようだった。
しかし昨日の試合はどうだ?草原に吹く風は無く、草木はそよぎもしなかった。
勝つために、というか負けたのだけれど、トーナメントに進むためなら何でも有りなのか?
何が何でも勝ちに行く、点をとりに行く。逆境を跳ね返す風を吹かせる。それが侍の魂ではないのか?
もちろん誰が、悪い訳でも無いけれど残念で仕方が無い。
侍魂を貫くならば、彼らは一位通過を目指して全力で走り、ボールを蹴ってゴールに向かうべきだった。
そして、魂を捨てた侍は…赤い悪魔に翻弄される。よしんば赤い悪魔を倒したところで次に控えるのは南米最強のカナリア軍団。もはや勝てる気がしない。
いや、それでも信じよう。
失敗や気の迷いは、どんな高潔な人間にだってある。きっと彼らが一番、不本意な戦い方をしたことを自覚しているはずだから。だから彼らは、侍魂を取り戻すことが絶対に出来る。そうして侍たちが途方もなく強い相手に立ち向かっていく姿を、やはり応援せずにはいられない。
青い雷鳴を草原に再び。僕は信じている。