六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

坂田師匠

吉本興業の重鎮。坂田利夫さん。
今年の春に自宅で転倒。右大腿骨を骨折され入院されていた。
そして7月下旬には退院、今では元気にテレビ出演まで果たされている。
御歳、73歳。まだまだ現役バリバリだ。


お年寄りは、ちょっとしたことで骨折しやすい。骨粗鬆症に代表されるような骨密度の低下が主な原因だ。また、下肢筋力の低下により転倒もし易くなる。
施設での転倒事故も運が悪ければ、即、骨折に繋がる。
特に大腿骨頸部骨折等によって、歩行や立位保持が困難になるケースもあり、骨折はADL(日常生活動作)低下の大きな要因となり得る。そしてADLの低下かから認知症が進行するお年寄りも僕は沢山見てきた。自分の今まで出来ていたことが、徐々に出来なくなることによって、寝たきりや認知症が進行するケースは本当に良くあるのだ。
なので、坂田師匠の骨折事故の報に際して、僕はすごく心配していた。


自宅で転んだだけで、大腿骨を折るのだから…これは、重症だぞ…。


しかし彼はそんな心配をよそに入院生活でさえも「綺麗な看護婦さんに囲まれて楽しい~♪」と喜びに変えてしまった。
そして短期間で見事に社会復帰を果たされる。


まだまだ、お若い(後期高齢者の範疇には属さない)こともあるが、ご本人のパーソナリティーによるところも大きいのだと思う。災い転じて福となす…七転び八起き…とにかく身に起こった不幸でさえも笑いに変えてしまえる坂田師匠のバイタリティーには学ぶべきところが大いに有ると思う。


高齢者が、何らかの喪失感を感じてしまった時に、坂田師匠のような心の持ち様で再び人生の喜びを感じられたのなら、本当に素晴らしいことだろうな。


実は、20数年前に亡くなった僕の祖父。寅吉さんは、どことなく坂田師匠に似ている。
坂田師匠をもう少しゴツゴツした風貌にして、もう少し賢そうな顔にすると寅吉さんになる様な気がする。寅吉さんも坂田師匠同様に体は小さかった。


そんな寅吉さんは、坂田師匠がテレビに出演をする度に、いつも言っていた。
「この人、自分のこと阿保や阿保や言うてはるやろ?」
「そやけどな、ほんまは、この人。無茶苦茶、賢いんやで。」


その当時の僕には寅吉さんが何を言いたいのか良くは分からなかった。けれど、今は良く分かる。


寅吉さんが亡くなったのは、70代の半ばだった。
坂田師匠も、ぼちぼちそういう年齢だ。
身体を労わりながら、これからも頑張って欲しいな。今の僕は、そんな風に思う。

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