六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

事故防止限界説。

高齢者施設において、転倒等の事故防止は至上命題であるかの如く語られる。
確かに、職員の移乗介助中に発生する事故については何としても防ぐ必要があるだろう。
例えばAさんにベッドから車いすへ移ってもらう。前から抱えて回転移動。
勢い余って、車いすのフットレストでAさんの足を強打してしまう。
例えばBさんの手引き歩行中。Bさんの歩行速度に合わせられずに、つまずかれて転倒されてしまう。
そういうのは論外で、そういう事故が多発する状況は絶対にあってはならない。
それらの事故は、職員の介護技術の向上や事故の教訓化によって限りなく「0」に近づけることが出来るはずなのだから。


しかし、お年寄りが自ら、立ち上がり転倒する。あるいは徘徊中にどこかで打撲する。
そういうのって、防ぐのには限界があると僕は思うのだ。
立ち上がったら2~3歩でこけるのに、何度でも立ち上がろうとするお年寄り。
延々と徘徊を続け、止まることの出来ないお年寄り。
もちろん注意を払って、寄り添える時には寄り添ってという姿勢は大切だが、施設職員は往々にして「危ない!座って下さい!」と言葉や行動でそれらのお年寄りを制止することで事故を防止しようとする。
そのことで事故が防げたとして、お年寄りの「立ちたい」という意思や「歩きたい」という思いは封殺されてしまう訳である。そういうのって何か違うでしょ?


だから、ある程度「事故もやむなし」という姿勢も必要だと思うのだ。大きな事故になることが無いように環境整備には注意を払いつつ(例えば床は柔らかい素材を選ぶ。例えば徘徊ルートの角張ったところを保護するなど。)何でもかんでも「危ない!座って!」は、やめるべきではないか?


かく言う僕も、新人の頃は必死で、そういったお年寄りを制止し続けた。
ショートステイから働き始めた僕にとって「在宅」の一時預かり的な施設で、お年寄には絶対怪我をさせてはならないという教えは絶対だったのだ。だから危険な方が立ち上がると駆け寄って座ってもらうことを何度も何度も繰り返した。
何度言っただろう。「座って下さい」…。「危ないですよ」…。


ハッキリ言って。職員としてもこれは多大なストレスだ。
忙しく仕事に追われる中で、そういった制止を繰り返さなければならない。だんだん優しくなれなくなったりもする。


そういった経験から、僕は学んだ。事故防止には限界があり、そういった方に対しては必死にべったりと側に付いて対応するのではなく、一番危険な部分(例えばふらつき易い曲がり角。例えば椅子に座ろうとする瞬間など。)でさりげなくフォローすること。そして安全に配慮した環境整備を意識すること。
そういうソフトな事故防止こそが、介護する側もされる側もストレスを回避する方法なのだと。


さぁ、必死のパッチで目の色を変えてお年寄りを制止するのは、やめましょう。

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。