六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

顧客満足度。

介護技術や、介護の根拠。お年寄りの生活を支えるうえで不可欠な事柄。
それらは、これまで介護業界を担ってきた先人たちの教えに学ぶ所が多い。
だが、それだけでは本当の意味においてお年寄りやご家族に満足して頂くことは難しい。


つまり、それら「不可欠な先人の教え」に加えて、介護保険以降の介護業界を担う我々にはもう一つ考えなければならないことがあるということを今回は主張したい。


介護保険がスタートしてから、最も大きく変わったことが老人福祉がサービス業へと変化したということだ。それまでの措置の時代において介護は「ほどこし」的な意味合いが良しに付け悪しきにつけ付きまとっていた。しかし介護保険はお年寄りやそのご家族にサービスを選んでいただくという建前のもとスタートし、完全な市場原理では無いが、行政の統制下のもとの市場(これを準市場と経済学用語では呼ぶ。)と化して、営利企業をも巻き込んだ。そうして介護業界は、一定の競争原理が働く場へと移行した訳である。


さて、それは現場レベルにおいては何を意味するのだろう?


先ず、サービス業における鉄則は、カスタマーサティスファクション(CS)を追求するということだ。
つまり顧客満足度を上げずして、サービス業で競争に勝ち残ることは難しく、その追求に成功することが勝利の鍵だということ。
ディズニーランドのそれは、本当に凄いらしいそうだ。
毎早朝に、園内全てを「水洗い」するという話を聞いたことがある。
普通の掃除では無く、それはまるで、あの広大な土地の全てをお風呂に入れるようなものだ。
普通に考えれば、そんな大層な作業は週に1回程度で良いのじゃないか?と思う。
しかし、彼らはそれを年中無休で365日続けるのだ。
ディズニーランドは魔法の国。それを期待してお客様は来て下さる。
例えば、赤ちゃん連れのご家族が来園して下さったとしよう。
魔法の世界に身を置くご両親が、その世界に目を奪われた隙に、赤ちゃんがベビーカーを抜け出して、園内をハイハイし始める。
そして、そのハイハイの先に、本当にごく些細な、ごく小さな小石が転がっていたとしよう。
その小石の為に、赤ちゃんの小さな可愛らしい手に傷ができてしまったとしよう。
どうだろう?
その瞬間に、赤ちゃんだけではなく、両親にかけられた魔法も一気に解けてしまうのではないか?
魔法が解けた瞬間に、その家族の日常が、ディズニーランドの中に居るにも関わらず突然に現れる。
それは、決して有り得べからざる事象だと、彼らは捉えているのだ。
つまり、その様な事態が決して起こらぬように…魔法の世界に訪れた人々の、魔法が解けてしまうことが決して無いように、あの広大な土地を毎日「水洗い」するわけだ。


さて、省みるに介護業界のCS追求はどうか?


顧客はつまり、お年寄りやそのご家族。
対象が、社会的に弱い立場にある人々であるだけに確かにディズニーランドのようなわけにはいかない。けれど、先ず襟を正して考えてみて欲しい。
介護現場で働く人々は本当に、お年寄りやそのご家族を「お客様」であると認識しているだろうか?
決してそうでは無い現状が、確かにある。
断定的に言う。介護を「させて頂いている」というよりも「してあげている」と考えている職員の方が介護現場には圧倒的に多い。
あなたの給料は、お年寄りやそのご家族から頂いているものなんです。そのことを決して忘れてはいけない。


だからと言って、CSを大前提にしつつもエンプロイーサティスファクション(従業員満足度)についてもおざなりにしてはならないと僕は考えている。
従業員満足度が、充足してこそのCSだとも思っているし、それの不足こそが介護業界の人材不足の一因だとも思うのだ。


CSおよびES(従業員満足度)の充足が絶対的に必要だ。
その為の処方箋は二つ。
その一つが以前のブログで述べた「適当介護」。
そして、もう一つの処方箋。
それが「ナラティブケア」である。
これについては別の機会にもう一度述べたいと思うが、簡単に言うと…
「物語のある介護」「その人の人生の物語に寄り添った介護」という意味だ。


今、目の前にいるお年寄りの状態に、とにかく生を繋げるためだけに躍起にはならずに、自然を大前提とする。お年寄りに無理をしてもらわない為の「適当介護」
そして、目の前にいるお年寄りの「人生の物語」に目を向ける為の「ナラティブケア」


この両輪で、介護を捉えることが、我々の業界の目指す方向性だと僕は思っている。
それがいずれ、お年寄りやそのご家族の満足に繋がっていくと信じているし、その先にあってこそ、超高齢社会は乗り切れるのだと思う。


「適当介護」については、前出のブログを参照して欲しい。
そして「ナラティブケア」については、改めて機会を設けて述べたいと思う。

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