足元に絡みついているのは、緑色の長い蔓でしかない。
それを振り払った時に感じる痛みは、長く伸びた蔓が千切れてしまうことに対して、可哀そうに…、と思うくらいの極ちっぽけで取るに足りないものだ。
けれど、その時には感じなかった痛みがワルサーに膝を撃ち抜かれた時の様な痛みに変わって突然に表れる。
そういう事態が何の予告も無く唐突に訪れるのが人生だ。
引き千切った茎は、緑色の血を流しながらそこに静かに横たわっている。
再生の気配を漂わせてはいるが、それと同じくらいに強烈な死臭をも放っている。
そうして僕はP38の引き金を引いた。その引き金は冷たく全くもって無機質で、震える僕の指を翻弄し、蔑んでいた。だから僕は思い切り指に力を込めることができた。
ズドン!!
手ごたえは確かにあった。おそらくそこにはワイン色の赤い血が流れていたはずだ。
けれど引き金にかかった僕の指は、雪の様に真白で美しかった。
そうして街には決まりごとの様に冬が訪れる。