六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

雪の降る街で。

久しぶりに京都の町に雪が降り積もった。真白なそれは町を包み込み、碁盤に延びた不健康で、もったいつけた路面の上に数々のスリッピーな罠を張り巡らせていた。


朝から様々な救急車両のサイレンが鳴り止まず、耳に痛いほどやかましい。


夜勤からの帰り道、エンジンブレーキを最大限に活用しながら車を運転をする僕は、雪化粧をした金閣寺を拝もうとする人々の群れとすれ違いながら大きな声で叫んでいた。


「さらば。」「さようなら。僕は荒野を目指す!」


17年間と半年、介護の現場で働き続け、多分千回以上の夜勤をこなし百人近くの死を悼んできた。僕は、その現場から足を洗うことにした。退職届なんて書いたことも無いからネット検索をしながら、一応の体裁を整えて、思い切りよく叩きつけた。


なにを言おうと去る身の僕は、負け犬でしかない。


けれど、これだけは言わせてもらう。もはや人材の枯渇という言葉すら当たらない。
資本主義社会の中で生きることの出来ない無能な人間の集団が吹き溜まる、それこそが高齢者福祉の現場だ。僕もその集団の中の無能な人間の一人ではあるけれど、もはや限界が来た。


このブログも、これで最終回にする。


雪は溶けて、気が付けば桜の季節が賑わいと共に京の街を訪れる。憂鬱な賑わいの中で静かに、けれど確かな足取りで僕は別の道を歩んでいく。
これまで共に歩いた仲間達よ、本当に有難う。身体には気をつけて、信じた道を進んで行って下さい。さようなら愛しき人々よ。さようなら高齢者福祉。

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