六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

観覧車🎡

高みへと心を弾ませながら登っていく。


どんどんと視界が広がって世界が丸く見えた。


こんなにも世界は美しいのだと感嘆し、僕は生きていることに心から感謝をする。


感謝が心を満たし、空に向かって手を広げた所に頂点があった。


空が驚くほど、近い。


そうして、空を見上げている間に下降は始まる。


そんなはずは無い。降りたいなんて思わない。僕は降りたいなんて一言も言っていない。


けれど下降は止まらない。決して、止まることを知らない。


世界は徐々に丸みを失い、美しさを損なった平板な二次元的世界へと少しずつ、帰って行く。


心は醒め、身体は冷え、五感を奪われるような感覚に打ちひしがれながら、下降は永遠のように果てしなく続いていく。


目を瞑り、耳を塞ぎ、息を止める。まるで、底なしの井戸に放り込まれたカエルのように。


そうやって、どれくらいの時間が流れたのだろう?


やがて光が、遠くに見えた。


いつの間にか下降を終えた観覧車は、過去をなぞる様に再び上昇に転じていたのだ。


そうなのか。


そういうことを繰り返して、僕らは生きている。


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