六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

闇の中で笑う。

真っ暗闇の中で過ごした体験を持ったことがあるだろうか?
現代を生きる人々には、ほとんどそれは、無いものなのかも知れない。


現代は、真夜中でも明るい。24時間オープンのコンビニはまるで誘蛾灯の様に夜の闇に徘徊する人々を誘う。


森や山の中で、暗闇の中で、一夜を過ごした経験のある者など、そうはいないだろう。


胎内巡り、という例外はある。お金を払って、暗闇の中を巡るあれだ。京都で言えば清水寺に、それはある。でもそんな物は本当の闇ではない。作られた、疑似的な闇の中を手すりや壁を伝いながら、ただ歩くだけだ。ほとんどお化け屋敷と変わりはしない。


本当の闇は現代人の心の中にこそ、あるのかも知れない。


誰かの闇は、誰かに伝染する。それは人々に蔓延し際限なく、果てしなく広がって行く。


介護や福祉を取り巻く世間の目は冷酷だ。まるで他人事なのだ。
認知症のお年寄りの言うことには、輪廻のように際限が無い。
共に働く仲間からは、負のオーラしか感じられない。
経営感覚の欠片もない社会福祉法人の経営者の知力には辟易する。
国を守るべき政治は、ミサイルと簒奪と既得権益固守にしか興味が無い。


だけど。


だからこそ僕は。


今日も明日も明後日も、その先もずっと、闇の中で笑う。


止まない雨は無い。決して明けない夜だって無い。
冬は必ず春となる。


そう信じながら。あるいは、そう信じることのできる自分の心にすがりながら。


真夜中に飛ぶカラスの群れが僕の心を蝕んでしまうその前に、僕は闇の中で、今日も密やかに笑う。

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