六鹿宿

介護保険発足直後から介護の世界で働いている僕が見たり聞いたり感じたことを綴っています。

褒める。

褒める言葉の数は多い。
「よく頑張ったな。」「出来たじゃん!」「頑張ってるね!」「期待に応えたね。」


だけど、そう言う言葉をかけるのって意外と難しい。
たぶん僕自身も、そういう言葉を先輩諸氏から、もらうことなく今まで仕事をしてきた。


いや、そういう言葉を受けていたのかもしれないが、褒め言葉で発奮するようなことは今まで一度も無かった。なんせ、心がねじ曲がっているものだから。


だから後輩への褒め言葉が、どうしても少なくなる。うまくは言えない。
褒めることが、後輩にどういう風に影響するのかを想像してみても何だかピンとは来ない。
だから、基本、僕からの褒め言葉は無しに後輩たちは育つしかない。


僕もそういう風に育ってきたのだから、それはそれで仕方が無い。


だけど、それが災いすることだってある。


後輩が今、僕との距離感に悩んでいるらしい。


半年前に僕は彼に言い放った。「お前は俺とは違う道を進むんやな、それはそれでええで。お前の道、ちゃんと進め。」
だけどこの言葉は褒め言葉には聞こえないらしい。


それから彼は僕を遠く感じている。そんなこと全然知らなかった。


それを教えてくれたのは、僕の右腕であるサブリーダー。
彼女は彼の話をゆっくり、じっくりと聞いてくれたらしい。


彼の失敗を契機にして、彼が今何に悩み、何を必要としているのか?それをゆっくりと彼女は聞いてくれたようだ。
僕なら「阿保か!自分で考えて這い上がってこいや!!」と怒鳴りつけるところだが、彼女はゆっくりと話を聞いてくれていたのだ。


その話の中で、彼は半年前の僕の言葉を気にしているのだということを語ったらしい。


ふむ。ふむ。褒めるのは難しいし苦手だけれど、僕も彼の話をとりあえず、ゆっくり、ちゃんと聞かなければ…そんな風に感じた。


ありがとう、サブリーダー。君は、今のチームを抱擁している。
まるで慈母が迷い多き幼子を、その胸に抱くように。


必要やな。母性。もちろん父性も。
そういう役割、無くてはならない二人三脚。
いずれはそれも、永遠に失われるのだと、深く悲しく知っているのだけれど。

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